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お礼SS#010(single stories)
※以前別サイトで発表した話の改稿です
【PG12】(12歳未満の方は読む前にお家の方に読んでもいいか聞いて下さい) →ガイドライン
 
■よく晴れた休日
 
 よく晴れた休日の昼寝はすごく贅沢だ。
 
 珍しく何も予定がない休日、昼食の後ソファでうとうとして目を開けた。
 
 辺りは薄暗かった。夕方まで寝入ってしまったかと慌てて体を起こすと、タオルケットが肩から滑り落ちた。
――っ」
 急に不安になって、姿の見えない彼女を呼ぶと、隣の部屋からのんびりとした返事が返ってきた。
「なぁにー」
 部屋を出て、隣の部屋へ行った。窓から溢れんばかりに差し込んだ陽光の中で振り向いて、彼女が僕に微笑んでくれた。
「起きたの?」
「起きたら部屋が暗くて、一人だったから驚いた」
「ごめんねぇ。すごくお天気がいいからシーツとか全部洗濯してたの。そしたら干すとこがなくなっちゃったから、窓のところにも全部かけちゃったんだ。もうこれで終わり」
 
 彼女は話をしながらカーテンレールにベッドカバーをぱちんぱちんと洗濯バサミで止めていった。ベッドカバーに陽光が切り取られ、部屋は段々、隣の部屋と同じように薄暗くなっていった。陽光が細い線だけになったところで彼女が僕に笑いかけた。
「ねえ。せっかく晴れたから、どこか出かけようよ」
 そう言った彼女を抱き寄せて身をかがめ、耳元で囁いた。
「せっかく晴れたから、家でいいことしようよ」
 彼女が耳たぶを赤くした。
「駄目だよ。さっき全部洗っちゃったもん。乾くまで寝られないよ」
「タオルケットが一枚残ってるよ。それに、ちょうどいい感じに部屋の中が薄暗いから、きっとあんまり恥ずかしくないよ」
 
 身をかがめたまま、彼女の耳たぶを甘噛みした。彼女がびくっと震えた。
「……せっかく晴れてるのに」
 僕の頭の上から最後の抵抗のように、かすれた声の残念そうな呟きが降ってきたが、僕は他のことで忙しかったのでおざなりに返事をした。
「そこがいいんだよ、贅沢で」
「もう」
 僕はその返事を承諾ととって、彼女を抱き上げるとタオルケットの上の天国へ向かった。
 
「やだぁ。そんなの」
「ソファが狭いからしょうがない。我慢して」
「……いじわるっ」
「うん。僕は意地悪で君は優しいね。タオルケットかけてくれてありがとう」
「うっ……くふっ……ん」
 
 よく晴れた休日にすることの中で、一番贅沢なのはやっぱりこういう彼女の声を聴くことかな。
 
 幸せな吐息を一つ彼女に吹きかけると、彼女がそれに答えるように微笑んだ。
 
end.(2011/03/19)

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